調教理論とは

馬にはそれぞれ個性があり、能力差もあります。ある日を境に突然のように状態面で変化を見せることもあります。そのため調教では、他馬との比較というより、その馬自体の比較を重要視するものと考えてください。調教重視理論とは、調教での走法・タイムなどから調子の良し悪しを判別し、予想へ役立てようという理論です。

調教施設の概要

基本的に、馬がレースへ出走するために積む調教は、トレーニングセンター(通称トレセン)と呼ばれる厩舎が多数集合している場所で行われています。トレセンは日本国内に2箇所あって、東は茨城県の美浦、西は滋賀県の栗東です。ここで行われる調教にはいくつかのタイプががあります。

美浦トレセン

従来、関東所属馬(俗に関東馬と呼ばれる)の調教については東京、中山の2つの競馬場と白井の拡張厩舎街(当時は中山競馬場の分場扱い。現在競馬学校がある場所)を中心に実施されていましたが、調教に必要なコース本数が充分確保されていたわけではないことから、1968年に本格的なトレーニングセンター施設を美浦村に建設することで合意し、10年間の歳月をかけて1978年4月10日に開設したのが美浦トレセンです。

調教コースは厩舎や馬場公園を挟む形で南北の2ヶ所にトラックがあり、南側には1600mのウッドチップコース(木片を敷き詰め競走馬の足の負担を抑える)が、北側には障害用の調教コースがあり、さらに馬のクールダウンやリラックスの為の逍遥馬道もあります。

栗東トレセン

開設は1969年11月11日。それまで関西所属馬(俗に関西馬と呼ばれる)の調教は主として京都・阪神・中京の各競馬場で行われていましたが、調教トラックが少なく、十分な調教ができなかったことや、平坦なコースばかりだった(関東の東京・中山には坂がある)ことから、当時関西馬は弱く、「東高西低」と揶揄されていました。この現状を打破すべく、中央競馬としては初めての本格的な調教トラックを開設することとなり、実現したのがこの栗東トレセンです。

現在はトラック4コースと坂路コースの5つからなり、トラックのC、Dの各コースと坂路コースには木片を敷き詰め、競走馬の脚部負担を抑える効果があると期待がもたれている「ウッドチップコース」を採用しています。この充実した調教設備が整い1988年以降、毎年関東馬の年間勝利数を上回り、今となっては完全に水をあけている状況です。

調教のポイント

これらのコースを使って、実戦さながらに馬を走らせて鍛えるのが調教です。毎週大多数の馬が同じコースを使って調教を積んでいます。1頭だけで走る「単走」という形式で調教を積む馬もいれば、「併せ馬」といって2頭以上で並んで走る馬もいます。これは馬の管理をしている調教師が、その馬にあった調教メニューを日々試行錯誤して考えているもので、その内容は所属する厩舎のカラーによって変わってきます。

調教とは実践とは違い日々のトレーニングのことですが、調教でいい走りを見せることができる馬は、実践でもその期待をあまり裏切ることのない走りを見せてくれると考えていいでしょう。そしてその調教で、手ごたえ抜群で好タイムをマークしたり、併せた相手を煽るような調教を見せた馬は状態がいい、あるいは能力が高いと判断できます。また、馬なり調教主体の馬が一杯に追ったときは、「馬体が絞れないから」「調子が上向いてきたため、よりハードな内容を消化できた」などのケースが考えられます。

デビュー前の新馬は別ですが、既に競馬場で走っている馬であれば、前走時の調教と比較すれば調子が上向きかどうかはかなり簡単に把握できると思います。仮に前走でふるわなかったとしても、調教内容がガラッと変わってきた場合は変わり身に期待できますね。

調教駆けする馬、しない馬

馬によっては調教駆けする馬、しない馬がいます。調教掛けしない馬とは、実戦にならないと力を発揮しないタイプで、調教と実戦での結果が直接結びつかないことが多いです。そういう馬は若干判断が難しいですね。ですが、仮にある2頭の調教内容が互角だったとしましょう。しかしその2頭が、普段調教駆けする馬であるか、しない馬であるかということを掴んでいれば評価はまったく変わってきます。普段調教駆けしない馬が調教駆けする馬と互角の調教を演じたとなれば大きな期待を抱けますね。逆に普段調教駆けする馬が平凡な調教しかできなかったとしたら、当然実戦でも普段以上の結果を求めることは難しくなります。1頭の馬が普段調教駆けをする馬かどうかというのは押さえておきたいポイントですね。

TMの調教診断を利用する

競馬新聞を買うと、調教欄には、その馬の調教を長い間見てきた専属のTMによる調子の変動診断が矢印、ないしは点数で表記されています。迷ったときはそのTMの評価に委ねるといいかもしれません。なにしろ毎日馬ばかり見ている人の目ですから、我々より精度の高い調教診断をしてくれるでしょう。

調教理論のまとめ

ざっと調教について説明してきましたが、結局のところ調教はその馬の調子の良し悪しの判断をする場所という意味合いが強いので、それまでの予想に最後にプラスα要素として検討するのが基本となりそうです。いくら調子が良さそうでも、明らかに能力の足りなそうな馬は買いづらいですからね。

調教公開

トレーニングセンターではGIレースなどの調教を見学できる「調教公開」を実施しています(要予約)。

  • 美浦トレーニングセンター(茨城) 電話番号:0298-85-2111(代)
  • 栗東トレーニングセンター(滋賀) 電話番号:077-558-0101(代)

 

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