脚質の分布による展開への影響

脚質の分布は、最も展開に与える影響が大きいファクターです。その脚質の中でも、先行脚質が展開に影響を与え、差し脚質がその影響を受けるという構図が成り立ちます。

先行脚質の中でも、前へ行く脚質であるほど、展開に与える影響の比重が高くなります。よって、前へ行く脚質から順に、展開にどのような影響を与えるかを把握していくことが、精度の高い展開予想への第一歩となるでしょう。

展開に影響を与える脚質・受ける脚質

脚質によって、展開に影響を与える脚質と、展開の影響を受ける脚質に分類できます。展開の影響を受ける脚質も、場合によっては展開に影響を与える側にも回りますが、基本的には影響を受ける側と思って間違いないと言えます。

レースにおいて、前へ位置どる馬ほど、展開に影響を与え、後方に位置どる馬ほど、その影響を大きく受けます。そして、後方に位置どる馬ほど、展開に影響を与えにくい存在と言えます。つまり、先行脚質(逃げ含む)の馬が展開に影響を与え、差し脚質(追い込み含む)の馬がその影響を受けると言えるでしょう。

 

影響を与える脚質

展開に影響を与える、平たく言えば、展開を作るのは先行脚質の馬です。逃げ馬や先行馬は、馬群の中で先頭集団の方に位置づけることで力を発揮するので、必然的に差し脚質の馬よりも前へ行きます。そして、そこからどのように先行脚質の馬がレースを運ぶかによって、展開というのは変化していきます。先行脚質が一団でペースを上げれば、そのレースはハイペースになり、ペースを落とせばスローペースとなります。レース展開を決めるのは、先行脚質の馬です。

 

影響を受ける脚質

先行脚質の作り出した展開に甘んじる存在が、差し脚質の馬です。差し脚質の馬は、後方に控えることによって持ち味を発揮する馬なので、先行集団に加わってレース展開をいじることは出来ません。ですから、自分にとって不利な展開であっても、それを甘んじて受け入れて走るしかないのです。よって、影響を受ける脚質と分類されます。

例外とも言えるのは、差し脚質の馬が、強引に展開をいじるレースをする時です。道中は展開の影響を受けながら後方を待機しますが、勝負どころで早めに仕掛けることによって、先行脚質にプレッシャーをかける事が出来ます。すると、プレッシャーを受けた先行脚質は、一度交わされるとやる気をなくす馬が多いので、交わされないようにとペースを上げざるを得ません。こういう状況は、差し脚質が意図的に展開に影響を与える側に回ったと言えるでしょう。

先行脚質の分布による展開への影響

先行脚質の馬の中でも、前へ行けば行くほど、展開に与える影響は大きいと考えられます。よって、各脚質が、何頭レース内に存在するかによって、どういった影響を展開に与えるかを比較してみます。前にいる馬ほど展開に影響を与えることから、以下でする頭数指定での比較は、指定脚質より前の脚質の馬は存在しないとして考えます。

脚質の確認はこちらから>脚質の設定と位置取りの分析

 

逃げa

とにかく逃げなければ実力を発揮出来ないのが「逃げa」です。他馬がハナ争いに絡んできようがきまいが、強引にハナを切る競馬をするのがこのタイプです。よって、ほぼ確実に展開に最も影響を与える存在となると言えます。

逃げaが1頭

逃げaが1頭ということは、ほぼこの馬がハナに立ち、その他の馬は逃げaをマークするか、離れて競馬をすることとなります。レースのペースもほとんどこの馬が自在に操ることが出来、展開の影響を受けやすい差し脚質の馬には苦しい展開が多くなります。

逃げaが2頭

逃げaが2頭いる場合は、ともにテンの脚が同じ程度で、枠順にもそれほど差がない場合は、前半どちらもが主導権確保のために競り合います。そうなると、それをマークする形で競馬する逃げbあたりにも競り合いの後遺症は残り、差し脚質の馬に展開が向きやすいと言えます。

逆に、逃げaが2頭いる場合でも、テンの脚に差があるか、枠順に大きな差があり、明らかにスタート地点でどちらかに逃げるために有利な条件が揃っていた場合は、不利な逃げaの方は無理に逃げず、離れた2番手で「実質逃げ」のポジションをとる場合もあります。

逃げa脚質は、逃げなければ能力を発揮できないと書きましたが、先頭にいなければならないわけではなく、大抵の馬は、周囲に他馬がいるかいないかで能力の発揮具合が変わってきます。よって、仮に離れた前に別の逃げaがいても、周囲に他馬がいなければ、自分が単騎逃げというような都合のいい解釈が出来る場合もあるのです。

その場合は、自分のペースで行っている先頭の逃げaも、2番手で行っている逃げaもともに自分の好きなように展開が作れるので、差し脚質には不利な展開となりやすいです。

逃げaが3頭以上

逃げaが3頭以上いる場合は、2頭の時ならば控えて擬似逃げを打てた馬も、周囲に馬がほとんどいない状況が考えづらいので、逆にダメ元でも積極的にハナを奪いに行きます。よって、前は乱ペースとなり、逃げb以下の先行脚質もその影響を受け、差し脚質に展開が向くこととなります。

 

逃げb

逃げbが1頭

逃げなくても競馬が出来る逃げbが1頭しかいない場合は、まずこの馬がペースを握り、タメ逃げを心がけることが多くなります。ペースを落としたところで、他馬が我慢できずに逃げのポジションを狙ってきた場合は、そのまま相手に行かせても影響ないので、逃げbにとっては絶好のレース展開となります。一方で差し脚質にはかなり厳しい展開となります。

逃げbが2頭

ほぼ逃げaが2頭の時と同じ状況になりますが、どちらも控える余裕がある以上は、同じようなテンの脚と枠順だったとしても、スタートして1Fもすれば、どちらかがハナへ行くか主張して、すぐに収まります。多少は先行脚質の馬に影響があるかもしれませんが、それほど大きいものではありません。先行脚質・差し脚質ともに有利不利はそれほどないと言えます。

もちろん、テンの脚や枠順に大きな差があった場合は、有利な状況の逃げbがあっさりとハナを切り、その直後にもう一方の逃げbがつける形となります。どちらにとっても悪くない状況で進むので、なかなかこの形が崩れることは少なく、こういった場合は先行脚質有利で進むことが多くなります。

逃げbが3頭以上

いくら控える余裕があったとしても、基本的には逃げに近い前々で競馬をしなければ力を発揮できないのが逃げ馬なので、3頭いたらまず熾烈なハナ争いが繰り広げられます。そうなると、先行脚質の馬もその影響をモロに受けることとなり、差し脚質の馬に展開が向くこととなります。

 

先行a

先行aが1頭

基本的に、逃げ馬がいない時に押し出されて逃げ馬の代役を務めるのが先行aです。よって、逃げ馬が存在しない時には、逃げbとほぼ同じような扱いをしていいと言えます。よって先行aが1頭だけの場合は、、先行aを含めた先行脚質の馬にとっては絶好のレース展開となります。

先行aが2頭以上

こちらも、ほぼ逃げb2頭の状況と同じと言えますが、逃げbよりは控える事が多い先行aだけに、余計にハナ争いは緩くなります。同じ条件だったとしても、どちらもまずはハナを主張するより、相手の先行aに譲ることから始まるからです。枠順やテンの脚関係なく、先行aを含めた先行脚質有利の展開が多くなります。

仮に3頭・4頭先行aがいたところで、基本はハナ譲ることが多いので、先行aが2頭の状況とさほどかわりませんが、仮に5頭以上、極端な話10頭先行aが揃った場合は、どの馬も前目のポジションを確保したいので、逆にハナへ立ってでもと考える馬が多くなり、ペースが乱れ、差し脚質の馬に展開が向くことはあります。

 

先行b

先行bが1頭

逃げb1頭が先行脚質有利、先行a1頭が先行脚質有利と来ているのだから、先行b1頭も同様かというとそうではなく、若干ですが違いが生じます。

違いというのは、~~を含めた先行脚質有利~~に当たる部分で、先行bの場合は、先行bにとって有利な展開とはなりません。

先行bは、逃げたことがない、あるいは逃げた時の成績がクラス平均を下回る馬であり、逃げた時点でこの馬にとっては向かない展開となっています。ペースどうこうの問題ではなく、脚質的に逃げがアウト判定でてしまうのです。よって、逃げる先行b以下に続く馬に展開は向きますが、先行b自身には向かない展開と言えます。

先行bが2頭以上

以下、先行aの時と同様に、3頭・4頭いたところでそれほど影響はありません。基本的には、逃げない先行bにとって絶好の展開となります。ただ、ハナにたたされた馬限定で、展開は向かないと言えます。また、極端に頭数が増えた場合は、やはり差し脚質の馬に展開が向くといえます。

差し脚質の分布による展開への影響

基本的には影響を受ける側の差し脚質が、展開に影響を与える場合は、早めに前を行く先行脚質の馬にプレッシャーをかけた時のみです。後方待機を決め込む場合は、大勢には全く影響しないので、早めにプレッシャーをかける差しa追いaについて説明します。

この場合、差しaと追いaの頭数はさほど関係ありません。1頭いるかいないかで、展開への影響が変化するものであって、複数頭いる時でも1頭の時でもそれほど影響力には変わりはありません。

 

差しa

早めに先行勢にプレッシャーをかける差しaが存在した場合、先行勢は一度差されるとやる気をなくす馬が多いので、追いつかれないようにペースを上げざるを得ません。それまで楽にレースを進めていたとしても、プレッシャーを受けたことによって予定よりも早く仕掛けざるを得なくなったならば、先行脚質にとって厳しい展開となることが多いです。

しかし、差しaの馬も、自ら展開を打開したという意味で、動かなかった馬に比べて多少展開の影響を被ります。先行脚質及び差しaにとって若干展開が厳しくなり、ここで動かなかった差しb以下の差し脚質に展開が最も向くと言えるでしょう。

 

追いa

追いaに関しては、どの程度まで位置を押し上げるかによって、展開への影響は全く変わってきます。

先行脚質の馬に一気にプレッシャーをかけるほど押し上げれば、役割り的には差しaと同じこととなります。ただ、差しaよりも長い距離押し上げる分、自らに跳ね返ってくる負担も大きくなるので、結局は動かなかった他の差し馬の手助けをするような形となります。

差し組と同じ位置に押し上げる場合は、先行脚質にとってはなんら影響を及ぼさないので、結局先行脚質の作った展開に甘んじる結果となり、先行脚質に展開が向くと言えます。

「脚質の分布による展開への影響」まとめ

①展開に影響を与える脚質と、影響を受ける脚質がある
②展開に影響を与える脚質は、先行脚質。
③先行脚質が作り出した展開を受け入れるのが、差し脚質の馬。
④前にいる馬ほど、展開に影響を与えることが出来る
⑤確実に先行脚質が有利に働くのは、逃げa1頭、逃げb1頭、先行a1頭の時
⑥確実に差し脚質が有利に働くのは、逃げaが3頭以上、逃げbが3頭以上、差しaが1頭の時

脚質によって、展開に影響を与える脚質と、影響を受ける脚質に分類できます。

基本的に先行脚質が展開に影響を与え、差し脚質がその影響を受けることになります。また、前へ位置どる脚質ほど、展開へ与える影響は大きくなります。

逃げaが1頭の場合は、差し脚質には不利な展開、逃げaが2頭の場合は、前半で逃げaが競り合った時は差し脚質に有利、前半競り合わなかった場合は、差し脚質に不利な展開となります。また、逃げaが3頭以上の場合は、差し脚質に有利な展開となります。

逃げbが1頭の場合は、差し脚質には不利な展開、逃げbが2頭の場合は、前半のハナ争いがすぐに確定しなければしないほど、差し脚質に有利になっていきますが、あっさりとハナ争いが決まると、差し脚質に不利となります。また、逃げbが3頭以上の場合は、差し脚質の馬に展開が向くことになります。

先行aが1頭の場合は、先行aを含めた先行脚質に有利な展開となり、先行aが2頭以上の場合は、少なければ少ないほど先行脚質有利に、多くなれば多くなるほど、差し脚質に有利に働きます。

先行bが1頭の場合は、先行b以外の先行勢に展開が向き、先頭に立たされてしまった先行bには展開は向きません。先行bが2頭以上の場合は、先行aの時と同様、多ければ多いほど差し脚質有利に働きます。

脚質の分布についてみたところで、次は枠順の影響について考えて行きましょう。

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