レース後半の展開の形成

レース後半の展開は、レース前半から受け継いだ馬群の隊形と前半のペースをベースに動き出します。前半の馬群の隊形が縦長である場合は、先行勢は直線前に息を入れざるを得なくなり、後続は差を詰めやすい状況となります。前半の馬群の隊形が一団である場合は、先行勢は直線前に仕掛けるタイミングを自由に選択できる権利が発生します。

また、レース後半のペースは、前半と正反対で構成される場合が多く、前半がハイなら後半はスロー、後半がスローならハイとなるのが基本で、これが崩れる場合は、そのレースの出走メンバーのレベルがクラス平均とマッチしていないか、あるいは馬場状態が特異である時のみです。

 

レース前半から引き継ぐもの

レース後半の展開は、レース前半から受け継いだ馬群の隊形と前半のペースをベースに動き出します。そのため、レース前半がどのようなレースだったかによって、レース後半の展開も大きく変わってきます。

同じ競馬のレースなんだから、それでも基本的な動きは一緒だろうと考えられるかもしれませんが、そうではなく、前半のレース次第で後半の展開の動くタイミングも変わってきます。

 

馬群の隊形の動き

レース前半の馬群が縦長だった場合と一団だった場合において、レース後半での馬群の動きにも違った傾向が見られます。

  

馬群が縦長だった場合

馬群が縦長ということは、逃げ馬が後続に差をつける逃げを打っており、馬と馬との間隔が広いということです。逃げ馬のつくるペースが速く、後続が追走に苦労する、あるいは追走をあえてしないからこそ縦長になります。

  

~残り800m付近

馬群が縦長ということは、逃げ・先行勢のペースが速い可能性が高いと言えます。となれば、前々で競馬している馬たちは、どこかで息を入れなければゴールまでスタミナが持ちません

残り800m付近は、どの競馬場でもほぼカーブの部分になるので、スピードを意識的に落としやすいポイントです。なので、逃げ馬やそれをマークする先行馬は、この部分で意識的にペースを落とします。

一方、後方待機組は、ここで先行勢にあわせてペースを落としたのでは、ゴールまでに捕らえるタイミングがなくなりません。前がペースを落としたところで、自らはペースを落とさずに走り、無駄な力を使うことなく前との差を詰めることを心がけます。その結果、縦長だった馬群が次第に詰まりはじめます

  

残り600m付近

ハイペースで先行していた組は、残り600mから再び加速したのでは、最後の勝負どころで必ず脚が上がります。なので、出来るだけ仕掛けを我慢しておきたいところです。後続がそれを許してくれるならば、ぎりぎりまで仕掛けずに脚を溜め、後続が迫ってきてしまう場合は、背に腹は代えられないということで、仕掛けを開始します。

後方待機組は、残り800mまではペースを変化させることなく、自然な追い上げを試みますが、残り600m地点では、先行勢に対するスタミナの優位から、一気に差を詰めにかかります。そして、加速した状態を保ったまま直線へ向いてきます。

  

馬群が一団だった場合

馬群が一団ということは、逃げ馬のペースが遅いために、後続が追走するのが楽であり、かつそれぞれのポジションをキープしたまま動けない状況と言えます。

  

~残り800m付近

馬群が一団ということは、逃げ馬のペースが遅い可能性が高いと言えます。なので、全馬ともスタミナに余裕がある状態ということです。

逃げ・先行馬には二つの選択肢があります。一つは、このまま一団の馬群を引き連れたまま残り600mまで引っ張り、スタミナを完全に残した状態での瞬発力勝負を後続に強いる競馬。もう一つは、残り800m地点で早めに仕掛け、残り600m地点では後続に対してセーフティリードをつけている競馬

前者を選択した場合、後続の中に瞬発力に長けた能力を持つ馬がいた時に交わされてしまう可能性があります。しかし、自らの馬が瞬発力で上位の能力を持っていた場合、これ以上ない勝ちパターンになります。

後者を選択した場合、自らのスタミナが最後まで持続できたならば、そのまま押し切れる可能性は高いですが、いくらスタミナを温存した状態で前半を乗り切ったとは言え、馬の持つ基本性能として、800mもの間全速力をキープすることは不可能です。どこかでツケが発生してしまうので、仕掛けの始めをうまく緩やかに入れるか、後続の脚も最後止まることを期待することになります。

後続勢は、先行勢が前者を選択した場合、瞬発力を生かしたいタイプの馬ならば我慢することが多く、逆に瞬発力に自信がないタイプの馬ならば、早めに先行勢にプレッシャーをかけるレースをします。

一方、先行勢が後者を選択した場合は、後続勢もその仕掛けに乗って仕掛けざるを得ません。スローペースの時点で、後続勢よりも先行勢の方が有利な状態でレースを進めていると言え、両者ともスタミナが豊富に残っている状態で先行勢にリードを広げられては、まず間違いなく差しきれなくなるからです。

  

残り600mからは掛け値なし

残り600mの地点からは、先行勢・後続勢関係なく、全ての馬がラストスパートの態勢に入ります。全馬がその時点で発揮出来る最大のスピードを駆使するので、余力のある馬は先頭に迫っていき、逆に余力がなくなった馬は失速していきます。その結果、隊列は自然と崩れていきます

 

ペース

レース全体のペースは、前半のペースによってほぼ確定されます。後半は、前半のペースを引き継ぎ、基本的に前半と反対のペースによって構成されます。

  

前半がハイペースだった場合

レース前半がハイペースだった場合、出走馬はレース後半に差しかかった時点で既に相当の負荷を受けています。それぞれの持つ能力全体の、半分以上の能力を既に使ってしまっている可能性が高く、後半は前半ほどのパフォーマンスが出来ないと言え、その結果前半よりも時計は落ちます。

前半がハイペースで、さらに後半もハイペースとなり、レース結果が出揃った時にミドルペースだったと判定される場合は、レース時計もそのクラスより上のレベルであることになり、そのレースに出走していた馬のレベルが高かったという結論になります。

  

前半がスローペースだった場合

前半がスローペースだった場合、出走馬はレース後半に差しかかった時点でかなり余力を残した状態にあります。それぞれの持つ能力全体の、半分以下の能力しか使っていない可能性が高く、後半は前半より高いパフォーマンスが出来ると言え、その結果前半よりも速い時計で走れます。

前半がスローペースで、さらに後半もスローペースとなり、レース結果が出揃った時にミドルペースだったと判定される場合は、レース時計もそのクラスより下のレベルであることになり、そのレースに出走していた馬のレベルが低かったという結論になります。

 

「レース後半の展開の形成」まとめ

  

①レース後半は、前半からペースと馬群の隊形を引き継いだ状態でスタートする
②馬群が縦長だった場合、残り800m地点で先行勢は息を入れ、後続がジワジワ進出する
③残り600m地点では後続勢は完全に加速しており、先行勢は後続次第で仕掛けが変わる
④馬群が一団だった場合、先行勢は早仕掛けか遅仕掛けかを選択する権利が生まれる
⑤先行勢が早仕掛けを選択した場合は、後続勢もそれに乗って仕掛けざるを得ない
⑥先行勢が遅仕掛けを選択した場合は、瞬発力に自信がある馬は我慢し、ない馬は仕掛ける
⑦レース後半のペースは、レース前半のペースと正反対で構成されることが多い

レース後半の展開は、レース前半から受け継いだ馬群の隊形と前半のペースをベースに動き出します。そのため、レース前半がどのようなレースだったかによって、レース後半の展開も大きく変わってきます。

レース前半の馬群が縦長だった場合、残り800m付近では先行勢は息をいれるので、自然と後続との差が縮まり、残り600m地点では後続勢が一斉に仕掛けだすので、先行勢はそれにあわせた仕掛けを余儀なくされます。

レース前半の馬群が一団だった場合、残り800m付近で先行勢は早仕掛けか遅仕掛けを選択することができ、早仕掛けを選択した場合、後続勢もそれに合わせて仕掛けます。遅仕掛けを選択した場合、瞬発力に自信のある馬は仕掛けを我慢し、瞬発力に自信のない馬は早めに差を詰めにいきます。

残り600m以降は、全ての馬が全速力で走る態勢に入っているので、ここからは余力のある馬は先頭に次第に迫っていき、余力のない馬は徐々に後退していきます。その結果、隊列は崩れていきます。

レース後半のペースは、レース前半のペースと正反対で構成されることが多く、前半がハイペースだったならば後半はスロー、前半がスローペースだったならば後半はハイとなります。

この前提が崩れる場合は、そのレースの出走メンバーがそのクラスのレベルとマッチしていない時か、あるいはその日の馬場状態が特異的な状態である時のみです。

レース後半の展開について見てきました。続いては、展開が読めるようになる手順について触れていきます。

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