レース展開の格言集

競馬に限らず、格言と呼ばれるものは、全て事実に基づいた真理です。ということは、格言に基づいた予想を立てれば、必然的に正解へ近づいていると言えます。

競馬の展開に関する格言は、実は全て展開予想の理論に基づいて証明することが出来ます。また、格言と言われていたものが、実は事実無根であるということもデータから導き出すことも出来ます。正しい展開予想の知識を持って、なんとなく理解していた格言を、完全に自分の馬券スキルとして取り込みましょう。

実用可能な格言

格言というからには、全て過去の事実に基づいている真理です。何の裏づけもない言葉は格言にはなりえません。ここでは、格言が格言たる理由を、展開の仕組みから紐解いていきます。格言になりうる事象とは、偶然が重なったものではなく、全ては必然が積み重なってこそ生まれるのです。

 

1200mの展開いらず

短距離のレースは、展開の影響はほとんどないという内容です。

距離によって、馬が問われる能力が変化し、短ければ短いほど絶対的なスピード能力が問われ、長ければ長いほどスタミナ能力を次第に問われていきます。そのため、短距離戦ではスピード能力に長けてさえいれば、展開に関係なく押し切ることが出来ることもあります。

しかし、完全に展開の影響を受けないかというとそういうことではありません。ただ、長距離戦と比較すると、展開の影響は小さくなるということです。

関連記事:レースの距離が展開に与える影響

 

長距離は騎手で買え

長距離レースは、馬ではなく騎手で馬券を買えという内容です

上で書いたように、短距離のレースほど展開の影響が小さくなるということは、長距離のレースほど展開の影響が大きくなると言うことです。実際に馬を操っているのは騎手なので、レース距離が長ければ長いほど、騎手の思惑や手腕がレースに影響するということです。

一般に競馬は通常、馬7:騎手3の割合といわれていますが、長距離においては、騎手7:馬3の比率になるといわれているほどです。長距離レースでは、ペース判断が上手な騎手ほど成績が上昇すると言えます。

関連記事:騎手の思惑(腕)が展開に与える影響

 

長距離の逃げ馬、短距離の差し馬

長距離は逃げ馬に注意し、短距離は差し馬に注意しろという内容です。

短距離は、スピード能力の争いとなるので、全馬スタートからほぼトップギアでダッシュします。そのため、ほとんどのレースが前傾ラップを刻むハイペースになります。

距離が短いことにより、展開の影響は長距離と比較すると少ないとは言え、全くないわけではありません。馬がトップスピードで走っていられる距離は最大600mなので、競馬のレースにおいて、最初から最後までトップスピードを維持することは不可能です。ハイペースで飛ばしすぎると、短距離であっても必ずゴール前で脚が上がります。

そのため、ハイペースになりがちな短距離では、差し馬が最後突っ込んでくるというシーンが多く発生するのです。

一方の長距離は、組まれているレース数が限られているために、当該距離未経験の馬も多数出走するということになります。

距離未経験ということは、最後までスタミナがもつかどうかが未知数ということなので、各馬ともスタミナを温存させながらレースをしようとします。そのため、道中スローペースになりやすく、逃げ馬が位置取りの優位性を確保したままレースを進めるので、そのまま逃げ切るシーンが多く見受けられることになります。

関連記事:レースの距離が展開に与える影響

 

重と不良は逃げ・先行馬を狙え

馬場状態が悪い時は、先行勢が有利という内容です。

雨や雪といった一時的な天候悪化は、馬場に水分を供給し、馬場状態を変化させます。

芝コースは、馬場が緩くなることによって踏ん張りが利きづらくなり、スピードが出にくくなります。そのため、差し脚質の馬は最後の直線でトップスピードに乗せることが難しくなり、先行脚質の馬とそれほど変わらない上がりしか使えなくなります。よって、先行勢がそのまま残るシーンが目立ちます。

ダートコースは、水分を含むことによって地盤が固まり、スピードが出やすくなります。そのため、芝コースでいう開幕週のようなスピード馬場となるので、距離損せずにレースを進められる先行馬が圧倒的に有利になります。

関連記事:馬場状態が展開に与える影響

 

単騎の逃げ馬を絶対にマークしろ

逃げ馬が1頭しか出走していない場合は、注意しろという内容です。

レースのペースを作る存在であり、主導権を握ることの出来る逃げ馬は、同じ脚質が複数頭いるとハナ争いをしなければなりませんが、1頭しかいない場合は、自らの思うようにレース展開を作ることが出来ます。

そのため、後続勢がプレッシャーをかけながらレースを進めない限り、逃げ馬は自分の有利なようにレースを運ぶので、展開が向くと言え、最後まで粘りこむ可能性が高いというころです。

関連記事:脚質の分布による展開への影響

実用不可能な格言

世の中では格言とされているものでも、実はその中身は全く信憑性のないものもあります。これらの格言には惑わされないようにしましょう。

 

府中の1800展開いらず

東京芝1800mは展開に左右されないという内容。

マルチタレントとして活躍された、競馬評論家の大橋巨泉氏が作った格言ですが、競馬が競走の形をとる以上、展開に左右されないレースなどありません。彼が言いたかったのは、府中の1800mでは展開に左右されず、強い馬が勝つということだと思いますが、実際のところどうなのでしょうか。

2004年4月~2007年6月までのデータを抽出したのが、以下の表です。

東京芝1800mを検証
対象レース 単勝回収値 複勝回収値 1番人気勝率 1番人気連対率 1番人気複勝率
全芝レース 1042円 285円 30.4% 48.7% 62.0%
東京1800 1165円 300円 34.2% 51.3% 66.7%

東京芝1800mの方が、1番人気の成績はいいものの、レース自体は荒れる傾向にあるようです。これは、1番人気が安定している代わりに、それだけ人気薄の馬の台頭が多いことを示しています。

もしも、東京芝1800mが展開の影響を受けず、強い馬が上位にくることが多いのであれば、単勝回収値・複勝回収値が全芝レースと比較して低くなければなりません。展開の影響を受けているからこそ、人気のない馬が台頭していると言えるので、この格言は事実無根だということになります。

 

魔の桜花賞ペース

桜花賞は、例年極端なハイペースになりやすいという内容です。

この格言は、一昔前まではその通りだったと思います。しかし、次第にその傾向も薄れていき、2007年以降からは真逆の格言が成立する可能性さえ秘めていると言えます。

鍵を握っていたのはコース形態です。以前の阪神競馬場は、芝1600mのスタート地点から最初のコーナーまでの距離が極端に短く、最初のコーナーまでにいいポジションを確保しておかなければ致命的な展開不利を受けることで有名でした。だからこそ、全馬がこぞって強引なポジション確保に出るため、必然的に極端なハイペースになりがちだったと言えます。

しかし、2006年の12月に阪神競馬場が新装されたことにより、芝1600mのスタート地点から最初のコーナーまでの距離にかなりの余裕が出来たことと、最後の直線が長く設定されたことにより、今までのようなハイペースが乱発することはなくなると考えられます。事実、2007年の桜花賞はスローペースによる瞬発力勝負となりました。

関連記事:コース形態による展開への影響

「レース展開の格言集」まとめ

①競馬の格言には、事実に裏付けられたものと、根拠の無いものがある
②1200mの展開いらず
③長距離は騎手で買え
④長距離の逃げ馬、短距離の差し馬
⑤重と不良は逃げ・先行馬を狙え
⑥単騎の逃げ馬を絶対にマークしろ
⑦「府中の1800展開いらず」は、根拠の無いもので、展開の影響を受ける
⑧「魔の桜花賞ペース」は、過去の遺物となり、今後はスロー中心になる可能性が高い

競馬の格言の中には、事実に裏付けられた真理と、事実無根の迷信の2つがあり、事実に裏付けられた真理は、その中身を展開予想の理論から証明することが出来ます。

レースの距離が短ければ短いほど、問われる能力は絶対的なスピードなので、展開の影響を受けにくくなり、結果「1200mの展開いらず」という格言が生まれます。

逆に、距離が長ければ長いほど、展開の影響を受けやすくなり、実際に馬の手綱を握っている騎手の思惑や腕が左右する部分が多くなります。その結果、長距離ほど騎手の差が結果に表れやすくなり、「長距離は騎手で買え」という格言が生まれます。

距離が短いほど、スピード勝負になるので、スタートから全ての馬がトップギアで走ることによりハイペースになりやすく、距離が長いほど、スタミナ勝負となるので、全ての馬がスタミナを温存しながら走ることによりスローペースになりやすく、その結果「長距離の逃げ馬、短距離の差し馬」という格言が生まれます。

天候不良により馬場が悪化すると、芝コースは水分を含んだせいでスピードが上がりにくくなり、位置取りの優位性が働きやすく、先行勢が有利に、ダートコースは、地盤が固くなることによりスピードが出やすくなり、距離損をせずに進められる先行勢が有利に、結果「重と不良は逃げ・先行馬を狙え」という格言が生まれます。

逃げ馬は、ハナ争いをする馬が他にいなければ、自らの望むようにレース展開を作ることが出来ます。なので、「単騎の逃げ馬を絶対にマークしろ」という格言が生まれます。

レース展開に関する格言について見てきました。最後は万馬券が出やすい展開がどういうものかを見ていきます。

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